11-3. 30%ルーリング制度
30%ルーリング制度
- 30%ルーリング制度の概要
- オランダには海外からの駐在員に対する特別な優遇措置として30%ルーリングという制度があります。主なメリットは、駐在員の雇用所得に対して最大30%課税所得が減額されることです。
- 30%ルーリングは、駐在員の現在の雇用によるオランダの雇用所得(毎月の給与、賞与、カンパニーカー等の経済的利益)に適用されます。したがって、オランダ国外で勤務した日数に係る雇用所得に対してオランダで課税する権利を有する場合(他国との租税条約に基づきオランダに課税権がある場合)、当該雇用所得に対しても30%ルーリングが適用されます。
- 2024 年以降は、上限(2023 年:223,000 ユーロ)までの雇用所得に対してのみ 30%ルーリングが適用されます。経過措置の適用もあります。
- 30%ルーリングの適用を受けるためには、以下の要件を満たす必要があります。
- オランダ国外から採用されていること
- オランダの労働市場では採用しがたい特別な技能を有していること
※年間のグロス給与が41,954ユーロ(2023年)を超える場合、上記の特別な技能を持っているとされます。30歳未満で、オランダの基準に照らしオランダの修士号と同等のオランダ国外の修士号を有する場合は、給与の基準は31,891ユーロ(2023年)となります。給与の基準は、30%ルーリングを適用しようとする全期間において満たす必要があります
- オランダで雇用される前の24 ヶ月間のうち少なくとも3分の2の期間、オランダとの国境から少なくとも150キロメートル離れた場所に居住していたこと
- 30%ルーリングは最長5年間(60 ヶ月)適用が可能です。最長60 ヶ月の期間は、オランダでの以前の滞在期間または以前の雇用期間によって短縮されます。オランダで以前に雇用された経験がある場合には、以前の雇用の開始日から起算する期間で5年を超えることはできません。
- オランダの居住者であっても30%ルーリングが適用される駐在員は、「部分的非居住者」として取り扱われることを選択することができます。部分的非居住者を選択する場合、特定の所得にのみオランダで課税されます。具体的には、全世界で稼得した雇用所得、オランダに所在する会社の実質的株式から生じる所得、およびオランダに所在する不動産から生じる所得のみがオランダで課税対象となります。預金利息や配当等の受動的所得は課税対象となりません。
- 30%ルーリング適用のための手続き
- 上記の要件を満たす場合、オランダ税務当局に30%ルーリングの適用申請を行うことができます。申請には以下の書類が必要です。
- パスポート/労働許可証のコピー
- オランダの社会保障番号
- 雇用契約書またはアサインレター等のコピー:オランダの税務上の居住者となる前に雇用契約が締結されていること
- 履歴書のコピー
- 税理士事務所等が納税者に代わって30%ルーリングの申請を行うことを確認する委任状
- さらに、駐在員と30%ルーリングの適用について合意し、かつ、上記の給与基準を満たすように 30%ルーリングの適用の影響を考慮し、給与等決定することに合意することが推奨されます。
- オランダでの雇用開始日から4か月以内に申請する必要があります。オランダでの雇用開始後4か月を過ぎてから申請した場合、30%ルーリングは申請した翌月からの適用開始となります。その場合、雇用開始日から30%ルーリング適用開始日までの期間について、30%ルーリングの適用期間が短縮されることになります。
- 30%ルーリングの適用を受けている納税者がオランダ国内で別の会社に転職した場合、前職の雇用期間の終了から新たな雇用開始までの期間が3ヶ月未満であれば、30%ルーリングは引き続き適用可能です。ただし、この場合、新たに30%ルーリングの申請を行う必要があります。