11-2. 個人所得税の制度
個人所得税の制度
- 居住者と非居住者
- オランダの税制は居住者と非居住者を区別しています。オランダに居住地があるかの判断は、状況や事実関係を総合的に勘案して判断されます。オランダの税務上の居住者とみなされるためには、個人はオランダと十分な永続的・継続的なつながりを持っていることが必要となります。判例によれば、オランダとの永続的なつながりはすぐに存在するものと認定される可能性があります。このようなオランダとの永続的なつながりがあるかどうかの判断に際しては、すべての関連する事実を考慮する必要があります。一般的には、オランダでの滞在の状況と期間、家族の帯同の有無等がオランダでの税務上の居住者の判断に大きな影響を与えます。
- オランダの税務上の居住者は、全世界所得(他国での貯蓄や投資から生じる所得を含む)に対してオランダで課税されます。税額控除(例えば、扶養手当の支払い、主たる住居に関して支払った住宅ローンの利子等)を適用することもできます。
- オランダの税務上の非居住者は、オランダの国内源泉所得に対してのみオランダで課税され、一般的な税額控除は制限されます。
- 課税の概要
- オランダの個人所得税は、以下の3つのボックスに区分されます。
- Box 1:雇用所得、事業所得および主たる住居からの所得に対する課税
- Box 2:実質的株式所有から生じる所得に対する課税
- Box 3:貯蓄および投資から生じる所得に対する課税
- Box 1:雇用所得、事業所得および主たる住居からの所得に対する課税
Box 1の所得は累進税率で課税されます。累進税率は以下の通りです(2023年時点)。
- 区分I:0ユーロから37,149ユーロまでの所得に対しては28%(社会保険料を除く、または社会保険料込みで36.93%)の税率が課されます。
- 区分II:37,149ユーロから73,031ユーロまでの所得には93%の税率が課されます。
- 区分III:73,031ユーロを超える所得には50%の税率が課されます。
※上記区分IIおよびIIIに社会保険料は課されません。
- Box 2 – 実質的株式所有から生じる所得に対する課税
Box 2の所得は、26.9%の税率で課税されます(2023年時点)。本人またはパートナーと合わせて、直接または間接的に以下の株式を保有している場合は、実質的株式の保有者とみなされます。
- 発行済株式の5%以上を保有している場合
- 株式の5%以上を取得できる新株予約権を保有している場合
- 年間利益の5%以上または清算分配金を受け取ることのできる利益分配証書を保有している場合
会社が異なる種類の株式を保有している場合は、納税者本人またはパートナーと合わせて、直接的または間接的に特定の種類の発行済株式の5%以上、または特定の種類の株式の5%以上を取得する新株予約権を保有している場合、実質的株式の保有者とみなされます。
非居住者は、オランダに所在する会社の実質的株式から生じる所得がある場合にのみ、当該所得に対して課税されます。
- Box 3 – 貯蓄および投資に対する課税
貯蓄および投資から生じる所得は 32%の税率で課税されます(2023 年時点)。貯蓄および投資とは、例えば銀行口座の預貯金、株式(1 社における株式保有割合が 5%未満)、不動産(主たる住居を除く)等です。
Box 3では、異なる種類の資産等ごとにみなし所得に対して課税されます。資産等の種類は、銀行預金、その他の資産(株式/不動産など)および借入です。オランダ税法上、個人の預貯金や投資等には以下のみなし所得が生じているとみなされます(2023年時点)
- 銀行預金 0.36%
- その他の資産: 6.17%
- 借入: 57% (上記の資産に係るみなし所得から控除します)
その年度の1月1日時点の資産の価値に対して上記のみなし所得率を乗じます。
なお、Box 3におけるみなし所得に基づく課税については、裁判でも議論されています。現在、みなし所得による課税が公正な課税であるかどうかについては、まだ裁判が続いています。従って、上記のBox 3の説明は将来変更される可能性があります。2023年夏のオランダ当局のガイダンスによれば、オランダ政府は2027年からBox 3の課税を実際の所得(配当、利子、譲渡益等)に基づく課税に変更することを検討するとされています。
- 非居住者は、オランダ国内源泉所得と判断される貯蓄および投資(オランダに所在する不動産等)のみが課税対象となります。オランダの銀行口座はオランダ国内源泉所得とはみなされません。
- 個人所得税に関する手続き
- 毎年3月に、オランダの居住者および非居住者である納税者は、オランダの個人所得税の確定申告書の提出に関する案内を受け取ります。オランダの確定申告はオンラインで行うことができます。オンラインで確定申告を行うためには、納税者はオランダの納税者のデジタル認証IDである DigiDを取得する必要があります。確定申告書は原則として翌年の5月1日までに提出しなければなりません。しかし、1年間の延長を要求することもできます。申告が遅れた場合は、罰金および/または利息が課されます。
- 申告書の提出後、オランダ税務当局は納税者から提出された情報を査定し、納税額/還付税額を計算します。オランダ税務当局は、申告書の提出後、3年以内に最終的な税額の査定をし、査定書を発行します(通常は1年以内に行われます)。
- 納税者は予備査定書の発行を請求することができます。この予備査定書は、最終査定書の発行時に課される税額が高額にならないように見積課税所得に基づき計算されます。予備査定書は当該年度中に発行することができます。また、オランダ税務当局は、確定申告の翌年にこの予備査定書を発行することもあります。
- 納税者が最終査定書の内容に同意しない場合は、最終査定書が発行されてから6週間以内に異議申し立てを行うことができます。